Fusion360を理解するためには、ここで説明するコンポーネントに関する理解は絶対に欠かせません。
モデルを構成するパーツが増えれば増えるほど、その管理も複雑になっていきますが、それを簡単にするための仕組みと考えていいでしょう。
幾つものパーツをまとめてしまうことが出来ますから、実際の物と同じように考えやすくなりますよ。
また、Fusion360の機能として活用される「ジョイント」を使えるようになるためには、コンポーネント化されている必要がありますので、避けては通れないものとなるでしょう。
コンポーネントの作り方やその取り扱いなど、基本だけはマスターしておくことが大切です。
私自身も全てが分かっているとは思っていませんが、これまで使ってきて知ることが出来たものだけでも紹介しておきますね。
説明するのは難しい要素かもしれませんが、できるだけ頑張ってみますのでお付き合いください。
Contents
そもそもコンポーネントとは?
簡単に言えば、ボディだけではなく、ボディを作るために書いたスケッチ、他のコンポーネントやコンポーネント同士のつながり方を決めるジョイントの内容など、およそデザイン内に含まれるすべての情報を一つにまとめて管理するための単位です。
「簡単に」と言ったのに、あまり簡単になってませんね。
今度こそ簡単に言います。
Fusion360のモデル要素をなんでもまとめて入れられる、便利な容器です。
すみません、簡単すぎました。
どうも加減が下手くそみたいです。
分かりやすいように、つい最近公開したダウンロード用モデル、0.5㎥バックホーを例にとって説明してみます。
このモデルのダウンロードは、こちらのページで可能です
このバックホーはいくつかのパーツを組み合わせて作られたモデルですが、それらのパーツが左側のブラウザ部分に表示されていますね。
その中でも赤枠で囲んだパーツがコンポーネントです。
どんなものが中に入っているのか、「クローラ」コンポーネントの左端にある三角マークをクリックして展開してみると、
下のような状態になっています。
ここで表示されているものが、この「クローラ」コンポーネントの中身というわけですね。
更に「原点」以外の要素を全て見えるように展開してみると、以下のような状態。
つまり外見的には「クローラ」という一つのものとして取り扱うことができるようになっていますが、実際にはこれだけの中身が入っているものというわけなのです。
今度は「ブーム」コンポーネントの中身を見てみると、
このコンポーネントの中にもコンポーネントらしきものが・・・
更にこの中の「アーム」を展開してみると、
またまたコンポーネントらしきものとして「バケット」があります。
バケットまで展開したら、さすがにコンポーネントの連鎖は終了しました。
このように、まるでマトリョーシカ人形のような入れ子構造を作れるのが、コンポーネントの大きな力と言っていいでしょう。
仮に実際の自動車を作る場合で考えてみれば分かるかと思いますが、自動車は末端まで行けば非常に小さなパーツも含めて数万点もの部品で作られた機械です。
しかしいざ全体を組み上げようかというときに、メーターパネルの部品を止めている小さなビスのことまで気にしなければならないとしたら、とても管理することは出来ません。
しかし、十数個のパーツで出来ているスピードメーターと、同じように組み合わされているタコメーター、燃料計などをそれぞれに作り、それを組み合わせるとしたらどうでしょうか?
それぞれが個別でしっかり機能することを確認しておけば、後は組み合わせるだけで「メーターパネル」という一つの自動車部品の塊が作れてしまうのです。
更にエンジンや足回り、トランスミッションなどを小さな部品から組み立てていき、それらを合わせて「自動車」を作るのなら、管理もできそうです。
小さな単位で確認できるようにして、それを組み合わせていくことで大きなもの、複雑なものを作れるようにするため、Fusion360に用意されているのがこのコンポーネントという概念なのです。
要するに、だんだん大きな塊となるように作っていくことができる仕組みということですね。
ようやく簡単にまとめられたような気がしますw
コンポーネントを作る方法
コンポーネントを作るためには、幾つかの方法があります。
ここではそれぞれの方法について、簡単に使い方を説明してみることにしましょう。
「アセンブリ」の「新規コンポーネント」から作る
ツールバーに表示されている「アセンブリ」メニューをクリックし、そこで現れる「新規コンポーネント」を選択することで作る方法です。
実は「作成」メニューにも同じ項目がありますが、内容は全く同じものですので、使い分ける必要はありません。
この機能を起動すると、以下のようなウィンドウが表示されます。
この内容は知っておいたほうがいいですね。
空の状態から作る場合
ウィンドウの上の部分は、全くの新規で一からコンポーネントを作るのか、それともすでに作っているボディをコンポーネントとして変換するのかの選択をする部分です。
「空のコンポーネント」を選べばコンポーネントの基準点を決める原点だけが存在する、「モノ」と呼べるものが何一つないコンポーネントが作成されます。
デザイン内に他のボディやコンポーネントがあっても、それらとは別のコンポーネントとして作成されるのです。
下にある名前の項目は、新たに作るコンポーネントの名前が指定可能。
作るものに合わせて名前を設定しておけば、ブラウザで探し出すのに役立ちます。
また、更にその下の「親」という項目は、新しいコンポーネントの親となるものが指定できます。
すでに作っているコンポーネントの部品となるものを作るのなら、最初からその関係を設定しておいたほうが分かりやすいでしょう。
「アクティブ化」にチェックが入っていると、新しいコンポーネントがアクティブ化して作成され、他のパーツが半透明になって新規作成がやりやすい状態になります。
新しいコンポーネントを作り上げるのに、他のパーツは邪魔になりやすいですから、基本的にチェックが入った状態でいいと思います。
仮に新しいコンポーネントを、下のようなデザインに作ってみることにします。
今回は球をコンポーネントとして作成したいと思いますので、名前は「球」にしておきましょう。
親を選ぶ場合は、コンポーネントを選択すれば入れ子構造にすることが可能です。
試しに直方体のコンポーネントを選択して作成すると、
新しいコンポーネントがブラウザで直方体の中に入っているのが分かりますね。
アクティブ化を選んでいますから、新しいコンポーネント以外はすべて半透明になり、邪魔にならなくなっています。
この状態で「作成」メニューから「球」を選んで、球体を作成すると、新しい球体だけがはっきり表示されますね。
ちなみに、半透明になっているのを元に戻す(他のコンポーネントやボディも普通に表示される状態にする)ためには、デザインの一番上にある項目にマウスカーソルを当て、右端に表示される丸をクリックすれば大丈夫。
この操作は、これまで新しいコンポーネントだけがアクティブ化された状態だったのを、デザイン全体がアクティブ化した状態に変えるというもの。
コンポーネントの中身を作り終えたら、必ずもとに戻しておくようにしましょう。
すでに作ってあるボディからコンポーネントを作る場合
「ボディから」というウィンドウ項目をオンにすると、既存のボディからコンポーネントを作ることができます。
ボディを選択してOKを押すと、
「円柱」ボディを含んだ「円柱」コンポーネントが作成されましたね。
ボティとして形を作ってからコンポーネントにするほうが使うケースは多いでしょうから、こちらを覚えておけばいいでしょう。
ちなみに、このパターンでコンポーネントを作成する場合、すでにコンポーネントになっている「直方体」も選択はできます。
しかしこのままコンポーネント化したとしても、結果は下のとおり。
「直方体」コンポーネントの中身だった「直方体」ボディが、新しいコンポーネントとして入れ子になっただけのことでしかありません。
あまり意味があるとは思えませんので、おとなしくボディからコンポーネントを作りましょう。
コンポーネントの階層を下げる目的でなら使えるかも・・・
ブラウザからボディをコンポーネントに変える
実際に最も多く使うコンポーネント化の方法は、このブラウザのショートカットメニューを使う方法になるでしょう。
方法は簡単で、ブラウザの中にあるボディを選択し、右クリックでメニューを開いて、その中にある「ボディからコンポーネントを作成」を選ぶだけ。
これだけの操作で、簡単にコンポーネントが作れてしまいました。
この方法の優れているところは、幾つものボディを作ったときに大きな効果として現れます。
例えば、このように多数のボディが含まれているデザインで、まとめてコンポーネントにしたい場合がその例です。
コンポーネント化するボディを、Ctrlキーを押しながら選んでいけば、複数の選択が可能。
連続しているボディをまとめて選択したいなら、最初の一つを選んでから、最後のボディをShiftキーを押しながら選べば、一気に選択してしまうこともできます。
これらのようにまとめて選択してから、先ほどと同じように右クリックメニューの「ボディからコンポーネントを作成」を選べば、選んだものをいくつでもコンポーネント化できてしまいます。
作業効率を高めるためにも、覚えておいてくださいね。
コンポーネントは入れ子構造で管理できる
これはコンポーネントが持つ非常に重要な機能です。
この機能があるからこそ、幾つものパーツをまとめて大きなパーツを作り、それをまとめて更に大きなパーツを作る、本来のものづくりに即した使い方ができるようになるのですから。
コンポーネントを入れ子にするには、先ほど説明した新しいコンポーネントで親を指定する方法か、すでにできているコンポーネントを移動する方法が簡単で良いでしょう。
例えば、まとめてコンポーネントにした円柱の一つを、「直方体」コンポーネントの中に取り込んでみましょう。
「円柱(2)」を取り込む場合、そのコンポーネント上でマウスの左ボタンを押しっぱなしにし、そのまま「直方体」コンポーネントの上まで移動してから左ボタンを離す、俗に言うドラッグアンドドロップが手軽です。
すると、下のように「直方体」コンポーネントの中に「円柱(2)」コンポーネントが入っている状態になりましたね。
見た目通りの操作ですから、覚えてしまうのも楽にできるはずです。
コンポーネントが入れ子になったと同時に、コンポーネントを表しているブラウザの記号が変わっているのには気づかれたでしょうか?
入れ子になる前の状態はコンポーネントであることを表し、入れ子にした後の状態は、内部にコンポーネントを取り込んで、まとめられているコンポーネントという意味です。
ブラウザで見分けるために必要な知識ですから、こちらも覚えておくといいでしょう。
これで簡単にコンポーネントをまとめることができるようになりましたね。
ただしこの方法は、ブラウザが1画面で表示できている場合でなければ使いにくい方法です。
以前に公開したバックホーモデルのように、表示を展開するとスクロールバーが表示されるような項目が多いものの場合、移動先となるコンポーネントが表示範囲に入っていなければ、ドラッグアンドドロップによる方法は使えません。
そんな場合は、カットアンドペーストを使いましょう。
ブラウザの中で他のコンポーネントへ移動させたいパーツを右クリックで選び、表示されたメニューから「切り取り」をクリックします。
すると、他のソフトのように選択したものが消えてしまうことはありませんが、移動先のコンポーネントを右クリックしてから「貼り付け」を選べば、無事移動が完了します。
もちろんWindowsユーザーならおなじみのCtrl+xで切り取りを行い、Ctrl+vで貼り付ける方法も使えますから、慣れているならそちらのほうが作業は早くなりますよ。
まとめ
Fusion360の基本的な機能と言っていいコンポーネントについて説明しましたが、理解して頂けたでしょうか?
とにかくパーツとして成り立っているものは、全てコンポーネントに変えていくようにすると、ジョイントさせる際にも簡単で迷いは少なくて済むと思います。
最初は、とにかく部材ができるたびにコンポーネント化しておきましょう。
今回の記事をまとめると、
- コンポーネントはパーツそのものやジョイントなどをまとめられる機能
- コンポーネント作成はボディを作って、ブラウザからする方法が簡単
- コンポーネントは入れ子にできる
- ブラウザのドラッグアンドドロップやカットアンドペーストで移動も可能
これらに集約されるでしょう。
モデルを作ったり、動きを与えるためには必ず使う機能ですので、しっかり実践で利用し、扱い慣れていただきたいと思います。