2次元CADの一つ、JWーCADを使っている人は未だに多くいると思いますが、私もその一人。
JWの「複線」コマンドは、すでに存在している線を基準として、新たに平行線を作成するものですが、図面を描く上では便利な機能です。
しかしFusion360の場合は、面の全周をオフセットするなら「オフセット」コマンドで大丈夫ですが、線1本となるとそのままではうまくいきません。
同じAutodesk社が作っているAutoCADでも「MLINE(マルチライン)」というコマンドで同様の効果を得られますが、Fusion360ではできないのでしょうか?
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複線が使えないとどれだけ面倒なのか
仮に下の図のような「表彰台」みたいなモデルが作りたくなったとします。
すると、必要となるスケッチは以下の様なものとなるでしょう。
外周の長方形については、「2点指定の長方形」コマンドを使えば簡単に作れるのはお分かりになるでしょうが、この場合に問題となるのは内側に配置された(1)と(2)の縦線です。
たったこれだけのことと思うかもしれませんが、いざ作ろうと思うと、意外と面倒な手間がかかってしまいます。
一例を挙げてみるとすれば・・・
- 線分を垂直にひく
- 寸法線をひいて間隔を調整する
と、2つの手順が必要な方法を説明してみます。
実際にする作業の順番を追って見てみましょう。
まず長方形はできているものとします。
縦線を作るために線分コマンドを選択し、上側の外周線にマウスカーソルを当て、カーソル先端にバツ印が表示される状態にします。
バツが表示されている状態で適当な場所をクリックし、線分の始点を選択してから、下の線に向かってマウスを移動させると、このように書き上がる線のプレビューが表示されますね。
下側の線にまで届くと、上の線で表示されたときと同じようにバツ印が現れますから、そのまま始点の真下あたりに移動させ、直角マークが表示されるようにしましょう。
その状態でクリックすると、上下の外周線に垂直な縦線が描けましたね。
先程直角を合わせてからクリックしていますので、直交の拘束記号が表示されている点は重要です。
これが無いと、寸法を使って移動させた場合に、角度が狂ってしまうケースもありますので注意しましょう。
あとは寸法線を入れ、左の外周線から離れる距離を指定すれば完了です。
スケッチ寸法コマンドを起動し、下の図の(1)、(2)の順に交点をクリックしてからマウスカーソルを上方向へ移動させると、スケッチ寸法のプレビューが表示されます。
適当な位置でクリックして寸法の場所を決定すると、下の図のように寸法値が入力できるようになりますので、「30」と入力してエンターキーを押しましょう。
すると左の外周線から30ミリの場所に線を引くことができましたね。
これを反対側も同じようにすれば、描きたかったものが完成します。
他にもできそうな方法はありますが・・・
例えばオフセットコマンドで外周をまとめてオフセットし、
不要な線をトリムコマンドで消してから、
延長コマンドで外周まで延長する方法もありえます。
しかし、やってみると分かりますが手間がかかりすぎる上、今回のケースでこの方法を使おうとすると、オフセット寸法に30ミリを入れた時点で上辺と下辺のオフセットがくっついてしまい、消えてしまうことからオフセットができません。
他にも色々な方法はあるかと思いますが、いずれにしても手間はかかってしまいますね。
同じオフセットコマンドを使うとしても、ある方法を使えば簡単にできてしまうのに・・・
知っているだけで効率アップできる方法ですから、ぜひこれから説明することを覚えてくださいね。
オフセットコマンドだけでできる、簡単な複線の書き方
では、先程はうまく行かなかったオフセットコマンドを使って、簡単に複線を作る方法を説明してみましょう。
方法は2つあり、一つは設定ウィンドウを正しく設定する方法で、もう一つは選択の順番を正しくする方法です。
一つづつ詳細に説明します。
設定ウィンドウを正しく設定する方法
オフセットコマンドを起動すると、下のような設定ウィンドウが表示されますね。
この中の「チェーン選択」というチェックボックスをオフにすれば、線を1本だけ選ぶことが可能になります。
この状態で外周線を選んでみると、線1本だけが選択され複線が描けるようになりました。
簡単ですが、様々な設定を試してみなければ、気づかない人も多いのではないでしょうか。
選択の順番を正しくする方法
一般的にFusion360の操作コマンドを利用するときは、コマンドを起動してから対象を選ぶという流れで作業することが多いと思います。
しかし、オフセットを複線のように使うためには、この順番を逆にするのが手っ取り早い方法。
つまり、複線にしたい線を選択しておいて、
それからオフセットコマンドを起動するのです。
すると簡単に線を1本だけ複線にできましたね。
コマンドをショートカットキー(O)で起動すれば、マウスの移動も最小限でできますから、効率的にも最もおすすめできる方法です。
まとめ
蓋を開けてみれば「なあんだ、そんな事かw」となりそうな小ネタではありますが、知らなければ最初に紹介した手順でやってしまいかねないもの。
このような細かいネタはFusion360では多いように思いますから、ちょこちょこと紹介していきたいと思います。
何度も使って、自然にこの手順でできるようになれば、モデルづくりが捗りますよ。
これまで使っていなかったという人は、実践で使ってみてくださいね。