推奨されるスペックがあることは、様々な場所で紹介されていますので知っている人もたくさんいるでしょうが、実際に使う上での最低スペックとはどのくらいでしょうか?
以前にもこのサイトで紹介している推奨スペックがあれば、安定して動かすことのできるFusion360ですが、そのためにパソコンを買い換えるとなると考えものですね。
今回は、私が使える範囲内のものに限られますが、3台のパソコンでFusion360を動かし、その動作を比較してみることにしました。
どのような違いがあるのかを知り、新規購入前の検討に役立てていただければと思います。
Contents
使用するパソコン
IIYAMA レベルInfinity(ゲーミングパソコン)
3Dでの作業を早めるために、価格が安い範囲内で出来るだけのスペックを求めて購入したものです。
グラフィックボード搭載で、画像を描く速度はかなりのものと言えますね。
現在3DCADでの作業をしているものとしては、メインのパソコンです。
SSD搭載で起動から作業に至るまで、かなり快適に使えます。
スペック
- OS:Win10Home 64ビット
- CPU:Intel(R) Core i7 6700HQ 2.6GHz
- メモリ:8GB
- ストレージ:SSD 256GB
- グラフィックボード:NVIDIA GeforceGTX950M
私が仕事も含めて使っている中では、唯一推奨条件を満たしているパソコンですねw
パソコン工房で購入した廉価パソコン
自宅用として購入した機種ですが、動画変換などで性能が必要だったため、Core i7を搭載しています。
しかしグラフィックボードが内蔵タイプであるため、3DCADではあまり高い性能は期待できません。
スペック
- OS:Win10Home 64ビット
- CPU:Intel(R) Core i7 2670QM 2.2GHz
- メモリ:12GB
- ストレージ:HDD 465GB
- グラフィックボード:Intel(R) HDGraphics 3000
たくさんのソフトを同時に立ち上げて作業するケースが多いため、メモリは増設しました。
第2世代のCore i7ですが、3DCADや3Dゲーム以外ではかなり快適に使えています。
貰い物のレノボG560
知り合いから譲り受けて、現在子供用として家においているパソコンです。
当初のメモリが小さすぎて(2GB)、普通のネットサーフィンですらまともに使えませんでしたので、途中で他のパソコンで余ったメモリを追加しています。
初代と思われるCore i5と内蔵グラフィックスで、大きな期待はしないほうが良さそうなパソコンですね。
スペック
- OS:Win7Home 64ビット
- CPU:Intel(R) Core i5 M450 2.4GHz
- メモリ:8GB
- ストレージ:HDD 450GB
- グラフィックボード:Intel(R) HDGraphics
スペック実験の方法
Fusion360では様々なモードが利用できますが、その中でももっとも重要なのは「モデル」作成機能でしょう。
というのも、パソコンに処理能力を求めることとなるレンダリングや、荷重・熱などのシミュレーションに関しては、クラウドを利用することもできるからです。
とにかくモデルさえ正確に作ることができれば、後はネット上のコンピューターに任せてしまえるのですから、重要なのはモデルを作る工程と言えるでしょう。
そのため、自分の主観でしか結果を言い表すことが出来ないモデルモードでの動きを、あえて実験の結果として表現してみたいと思います。
わかりにくかったらゴメンナサイ m(__)m
動かしてみるモデル
小さなモデルで実験してみた場合、あまりにもマシンごとの差が小さくて伝わりそうにありませんでしたので、小さな部材を大量に配置したモデルを作り、実験してみることにしました。
M8の丸頭ボルトを900本配置しています。
自分の環境でもどのくらいまで使えるのか確認してみたいという人は、ダウンロードして動かしてみるといいですね。
ダウンロードはこちらから→ テスト用ボルト配置モデル.f3d
実験してみた結果
それぞれのパソコンでスペックによる反応性の比較をしてみようかと思ったのですが、確認すらする前にわかってしまったことが一つ。
最も性能の低い「貰い物」パソコンに関しては、まずまともに画面表示すら出来ないということが判明してしまったのです。
枠やツールバーなどは正常に表示されますが、モデルエリアは全く何も表示されませんでした。
マウスをモデルがある場所に重ねると、一部分がハイライト表示はされるようですが、この状態ではとても作業になりませんね。
設定の問題かと考えて、全てのグラフィックス効果をオフにしても、結果は同じ。
初代のi5と旧式のHDGraphicsではモデルづくりすらまともには出来ないようです。
次に自宅用のi7で実験してみたところ、表示状態には特に問題なく、見た目は十分と言えそうです。
しかし、そのまま回転させてみた場合、細かくコマ送りされるような映像に。
全てのパーツを選択して移動させた場合、全く反応しない時間が発生してしまい、1分ほどかかって移動のプレビューが表示されるような状態でした。
計算そのものはi7の性能がありますから十分に使えそうですが、複雑な形状を表示したままで加工作業をするのは難しいと言えますね。
ここまでではあまり満足の行く結果といえる状態ではありませんでした。
そこでグラフィックボードを追加しているレベルinfinityで表示させてみると、当然のようにモデルが正常に表示されます。
このモデルをオービットで回転させてみると、しっかりヌルヌルと動きます。
全体を選択した状態で動作させようとすると、多少もたつくところは見受けられますが、使うのにストレスを感じるレベルではありません。
全選択で移動させた場合もその差は歴然で、最初の移動にこそ20秒以上の時間はかかりましたが、連続して移動しようとすると僅かなタイムラグでついてきます。
さすがは推奨環境!
余裕のある性能が、複雑なモデルでも対応できる能力と言えそうです。
性能不足のパソコンでFusion360を使う場合
表示性能に余裕のないパソコン(つまり推奨スペックではない場合)でFusion360を使う場合、パフォーマンスを優先させるために、グラフィック設定をするのは忘れないようにして下さい。
もちろんこれを設定することで全てのパソコンがFusion360を使えるようになるわけではありませんが、ストレスを軽減するくらいの役には立ちますよ。
設定は簡単で、Fusion360の画面右上にある「?」マークからメニューを開き、「グラフィックスの診断」を選びます。
表示される設定で、一番下にある「効果を制限」というチェックボックスをオン(チェックを入れる)にすると、設定内容が変化してパフォーマンス優先の設定に変わります。
モデルを作るのが優先なら、多少見た目が変わることは我慢する他ありませんね。
まとめ
今回行ったFusion360のPCスペックに関する実験では、以下のことがわかりました。
- 極端に古いPCではモデル表示そのものが出来ない
- CPUの性能が高ければ、グラフィックボード無しでもモデルづくりはできる
- ただし複雑すぎるモデルを作る場合には、推奨性能がなければ現実的には使えない
これらのことから、基本的には推奨スペックのパソコンを用意できるのが理想ですが、単純な図形やパーツ作り程度なら、多少古いパソコンでも十分に使えるようです。
当面練習して使ってみようと思っている段階や、簡単なパーツを作るための環境として考えるなら、それほど高スペックは必要ありません。
3DCADに慣れている人や複雑なモデルが作りたい人なら、早めに推奨スペックが満たせるパソコンを用意しておくと良いでしょう。